2012年3月26日 [ コラム ]

スタジアムで地震

3月14日水曜日、久しぶりにサッカー日本代表(U-23)の試合を国立競技場で観戦した。勝てば9回目のオリンピック出場が決まる大事な試合である。U-23日本代表の試合が満員になることはそれほど多くはないが、この日は4万人近いサポーターが国立競技場へ足を運んだ。前半、得点のチャンスを何回か作ったが残念ながらゴールは奪えず、0対0で後半へ。全体的には日本のペースで試合が進んだこともあり、サポーターもいい雰囲気で応援をしながら後半が始まり、約5分経過したとき地震が発生した。

最初はサポーターが応援している揺れかと思ったが、次第に横揺れが大きくなっていった。携帯電話の緊急地震速報(エリアメール)を受信したので、震源が千葉東方沖であることは容易に分かった。しかし地震の規模がすぐにわからなかったので、携帯電話で調べようとしたが、なかなか繋がらなかった。前の席に座っていたスーツ姿の男性がスマートフォンで調べて「最大震度6らしい」と言っていた。そうこうしているうちに揺れは収まり電光掲示板には「震源:千葉県沖、東京は震度3」と表示され、一安心。

直後に日本代表に先制点がもたらされ歓喜!そして4分後の追加点でオリンピック行きを大きく引き寄せた。

いろいろと忙しかった後半の45分間であった。

 

今回の経験を踏まえ、多くの人が集まる競技場という場所で地震が発生した場合、3.11を経験してなにが変化したかを考えてみた。

1. 会場

情報提供が比較的迅速であった。まず震源地、震度の情報がすぐに電光掲示板に表示され、数分後に会場の安全が確認できたと表示された。また、試合終了が近づくと、スタジアム周辺の交通情報や震度が大きかった地域(千葉東部方面)の交通情報が表示され、帰宅が困難な状態であるかどうかすぐに判断ができた。

これらの対応により、以前に比べ非常時の対応が訓練され運用されていると感じた。

2. 個人

すぐに上から落ちてくるものがないかを確認した。スタジアムの場合、照明装置が危険である。幸い近くにはなかったので安全であると判断した。

身に危険が迫る可能性があるか、すぐに確認する癖がついた。特にテレビでビルの看板が落ちてくる映像や天井が落ちた写真などをみて、少しではあるが何が起こるかをイメージできるようになった。

3. 周りの人たち

試合が水曜日の夜の国立競技場(東京都千駄ヶ谷)ということもあり、スーツ姿のサラリーマンが多かった。(自分もその一人ではあるが…)既述のスマホを使っていた男性は、最大震度を確認した後に、『会社に安否確認の報告をしないといけない…』とつぶやき、スマホで報告している様子であった。

この男性の行動から2つ気づいた点がある。

  • ニュースソースは全く不明であるが「最大震度6らしい」という独り言を聞き、筆者はそれを信用し一緒にいた友人に伝えた。これが、デマの元なのかと後で感じた。実際の最大震度は「5強」でかなり大きな地震という意味では大きくは変わらないが、正確性に欠ける情報であるのは間違いない。この情報が伝わっていくと、悪気のないデマが発生することになるのかと実感した。
  • 安否確認の報告である。企業のBCPという観点からすると、災害時に従業員の安否を把握することが重要であることは言うまでもない。筆者も無事の場合はいち早く会社の安否確認のシステムに報告している。こういった取り組みは3.11を経験してのことであるのは間違いない。しかし本当に身の危険を感じたら、報告などしている余裕はないのではないか。もし、スタジアムで照明が頭上から落ちてきて怪我をしたとしたら、安否確認システムに「怪我をしました」と報告するだろうか?現実にはかなり難しいだろうと感じた。つまり、『安否確認システム』は安全か否かを確認するシステムではなく実質『無事確認システム』になると思った。

今回、スタジアムという場所で地震を経験して、自分自身3.11以前にはなかった発想をしたり、行動をとることを実感した。次回、身の安全を確保する為に筆者が日常的に考えている事をご紹介していきたい。


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